ランチョンセミナー

  • 日時:2009年6月21日(日)12:00~13:00
  • 場所:長良川国際会議場 5階 国際会議室
    .........〒502-0817 岐阜市長良福光2695-2
    .........TEL:058-296-1200
  • 座長:野々村 浩光 澤田病院腎臓病センター

  • 『カーボスター透析剤の最新情報提供―機械適合性と期待される臨床効果-』
    宮野恵美 味の素ファルマ(株)マーケティング部透析グループ

  • 『カーボスターの臨床効果』 [#m320cda8]
    牧尾健司先生 三軒医院 透析室室長

    抄録

『カーボスター透析剤の最新情報提供-機械適合性と期待される臨床効果-』

 カーボスター透析剤は、2007年6月に上市され、発売1年半で、1,200施設以上に納入され、処方患者数も順調に増加している。
発売当初に一部で危惧されたアルカローシスの副作用、問題となるような透析機器の不都合は発売から現在まで報告されておらず、一方で、多くの臨床症状の改善が報告されている。

 発売当初、カーボスター透析剤のA原液の低いpH2.0~2.5、B原液の高い重炭酸濃度、透析液の高いpHという3つの製剤的特性から、各種透析機器との適合性が懸念された。
これらの製剤特性から、対策としてA原液の接液部分の洗浄を推奨しているが、発売後の透析装置内部材の観察では、ゴム・樹脂部材に変化は報告されていない。B原液の作製については水の温度を20℃以上若しくは25℃以上で溶解すれば従来通り使用可能であることが確認されている。配管内の炭酸カルシウム析出については、既存重曹透析液と析出物の量に差は無く、配管ラインの洗浄は従来通りで良いとの報告がある。
また、これまで不適合であったA粉末剤のホッパー式溶解装置での使用は、粉末剤の製剤改良により、今後適合化が図られる。

 現在までに、カーボスター透析剤の臨床効果として、維持透析患者の血圧低下改善や疲労感改善等、様々な報告がされている。
今後、カーボスターのアシドーシス是正能、アセテートフリーによってもたらされる効果についてさらに検討が進むことが期待される。

 今回の報告では、最新のトピックスとして発売後に報告された機械適合性及び臨床効果に関する話題を使用上の注意点も含めて報告する。

『カーボスターの臨床効果』

 血液透析中を安全に行なうには血圧低下の予防が重要であります。しかし、臨床現場では血圧低下のため、十分な血液透析が出来ず困ることがあります。血圧低下の対策として、ECUMの併用やHDFなどを試みますが、十分な効果が無く苦慮します。
 血圧低下の原因として、従来の重炭酸系透析剤には、少量の酢酸(8~12mEq/L)が含有されています。酢酸は、心機能の抑制、末梢血管拡張作用、血圧低下などの副作用が報告されています。血圧低下の原因が、この酢酸であるとすれば、ECUMの併用やHDFを行なったとしても、血圧低下に対しての予防効果は期待できません。しかし、2007年に酢酸を含まない重炭酸透析液カーボスターが発売されました。当院では、本年1月にカーボスターを導入し、血圧低下のため十分な透析が施行できない症例に使用してみたところ、血圧が安定し十分な透析が可能となりました。そのほかにも、昇圧剤の内服が必要でなくなった症例や透析終了後の起立性低血圧のため20分から30分離床できない症例が透析終了後5分程度で離床できるようになったことも経験しました。このように劇的に血圧が安定した原因を知るため、多周波インピーダンス法による身体組成分析装置を用い、透析中の体内水分分布をモニタリングしたところ、従来の酢酸を含む透析液と無酢酸であるカーボスターとでは、症例によって透析中の水分分布に違いがあることが分かりましたので、考察を加え報告いたします。さらに、粉末状透析液用剤の注意点についても報告いたします。
 当院では、2001年に粉末状透析液用剤を採用しA,B溶解装置の送液側に5μmのフィルターを装着したところ、A剤では、褐色に着色しB剤では灰色となった。このフィルターに捕捉された物質を赤外吸収スペクトル分析で同定を試みた。分析の結果は、A,B剤ともに二酸化ケイ素特級試薬とほぼ同一性を認めた。しかし、A剤にはB剤にみられなかった不飽和炭素と水酸基と思われる吸収が検出された。A剤のみに含まれる物質で、不飽和炭素および水酸基の吸収スペクトルを認める可能性のある物質として、グルコースが考えられる。グルコースは、分解され5-ヒドロメキシフルフラール(5-HMF)を生成します。5-HMFは、カラメル化やメイラード反応に関与し最終的に褐色物質になると言われている。このような、不純物質の除去方法について、考察を加え報告いたします。